『きさげ加工』工作機械製造工程で 絶対に必要な匠の技とは?

きさげ面の写真

あなたは “ きさげ加工  という作業を知っていますか?

 

工作機械製造業など、金属関係の仕事についている方なら『きさげ』を知らない人はいないでしょう。

しかし、それ以外の方は知らない人も多いと思います。

 

『きさげ』とは、とても重労働で地味な作業ですが、

工作機械製造工程に関してとても重要な工法!

欠かす事の出来ない作業なのです。

 

今日は『きさげ』とはどういった作業なのかをお話したいと思います。

 

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『きさげ加工』とはどういった作業か?

工作機械で部品を『平面』や『曲面』に加工し、綺麗に仕上げたとしても、

加工時に生じる『熱変動』(加工時の摩擦で生じる熱で物質が変化する)の影響等でヒズミや加工ムラが起きる。

そのため高精度な『平面』や『曲面』に仕上げる事は難しいです。

 

高い精度が要求される箇所については、これでは不十分。

そこで手仕上げによる『きさげ加工(摺り合わせとも言います)』が必要になってきます。

 

平面のきさげ加工『合わせ面のきさげ』

定盤の写真

■基準面となる面(部品を組み合わせる面)や『定盤』(上の写真)と呼ばれる平面度は(μ(マイクロ)単位)の基準面に、

顔料を薄く均一に塗る。(『ブリューペースト』等の青い顔料を塗る事が多い)

 

■『きさげ』を行う面(部品)には『光明丹』を同じく薄く均一に塗り、その二つを摺り合わせる。

 

すると凹凸の『高い所』『低い所』がうつる。(これを『アタリ』とも言います)

【下記写真参照】

凹凸がハッキリしている写真

 

当たりの当たっている所を『スクレーパー(工具自体を『きさげ』とも言う)』を使って削っていく。

きさげで削っている所の写真

これを何回も繰り返し、アタリを面に対して均一に広げていく。

 

下の写真を見てもらえれば分かる様に、同じ強さの当たりが均一に広がれば完成です。

きさげ面仕上がり前後の写真

一見簡単そうに見えますが、

ただ何も考えずに凹凸(アタリ)を削るだけでは、なかなか綺麗な平面にはなりません。

  • 凹凸(アタリ)の強い所は強く削る
  • 凹凸(アタリ)の弱い所は弱く削る

アタリの強さを一つ一つ見極めて、力加減を変えながら削っていきます。

 

そのためには技量も当然必要ですが、

アタリの強さを見極める『目利き』が必要になってきます。

そうした『目利き』を養うためには、長年の経験が必要になってくるわけですね!

 

そうして根気よく作業を続け、綺麗な平面に仕上げていきます。

ベテラン『きさげ職人』が作業をすると、

最終の仕上げ面は、顔が映る位の綺麗な面になります。

 

平面のきさげ加工『摺動面のきさげ』

摺動面(しゅうどうめん)とは、工作機械可動部面の事。

『ベース』という台の上を『スライド』という部品が、前後左右にスライドして動く面。

『ベース』と『スライド』が合わさる面の事を言います。

ターカイト摺動面の写真

摺動面に使用する素材として、

金属の他、『ターカイト(上の写真)』という物が使用されます。

 

油だまりについて

均一にアタリを付ける事はもちろんなのですが、

あまりにも凹凸が少ない面だと、潤滑油をためる所が少ないため不具合が出ます。

摩耗が早くなったり、焼き付きを起こしてしまい、

スライドの寿命を短くしてしまう原因にもなるのです。

 

そこで『油だまり』という、

潤滑油をためるポケットを意識して削る事が重要になってきます。

油だまりの写真

上の写真を見ると、『摺動面』にポコポコくぼみがある事が分かります。

これが『油だまり』です。

『摺動面』をきさげするにあたって、『油だまり』をしっかり掘る事がとても重要になってきます。

 

『摺動面』に関しては、下記記事で詳しくご紹介しています。

 

曲面へのきさげ加工『割メタル』について

芯出しバーによる当たり付

『割メタル』とは、主に大型の『軸受け』に使用されるもので、

2分割出来る構造から『割メタル』と言います。

 

私が主に行っている『割メタルのきさげ』は、

スピンドルを受けるための『軸受け』に施す事が多いです。

※スピンドルとは『精密高精度』『摩耗が少ない』回転軸の事

 

基準バーとなる『心出し軸』を基準をして、

『曲面』へのきさげ加工、押え強さ(スピンドルを保持するための強さ)の調整などを行います。

当たっている所を削る

『ささっぱ』という工具を使用してきさげを行う事から

『ささばきさげ』とも言います。

 

『ささばきさげ』に関しては、下記記事で詳しくご紹介しています。

 

きさげに使う工具

スクレーパー

スクレーパー

『スクレーパー』『シカラップ』、工具自体を『きさげ』とも言います。

 

平面へきさげ加工をする時に良く使われる工具で、

工具の先に『超硬合金(ちょうこうごうきん)』(硬度が非情に高い金属)の刃が取り付けられるようになっています。

超硬チップ

■【スクレーバーの使用例】

股関節の少し上辺りにスクレーパーの尻部を当て、真ん中ほどの所を両手で持ちます。

そして中腰状態になる。

 

股関節に当てた部分と、スクレーパーを持っている両手

この二点に同時に体重を掛け、きさげ面を削っていきます。

 

二点の力の掛け方が微妙に変わると、なかなか綺麗に削り取る事が出来ません。

 

ささっぱ

ささっぱ

『ささばきさげ』と言い、曲面を『きさげ』する時に使う工具です。

『ささっぱ』の先にはやはり、超硬合金の刃がついています。

ささっぱ2

■【ささっぱの使用例】

『ささっぱ』の尻部を片手で持ち、真ん中あたりをもう片方の手で持ちます。

そして腕の力だけで曲面を『きさげ』します。

 

光明丹

光明丹

『きさげ』を行う面に塗り、凹凸(アタリ)を見やすくするためや、

きさげ加工時の潤滑(滑りを良くする)の役目もします。

 

『光明丹』『グリス』『灯油』を練り合わせて使用します。

 

ブリューペースト

ブリューペースト

基準となる面に塗る顔料。

凹凸(アタリ)を見やすくするために使用します。

 

基準面に『ブリューペースト』を塗り、きさげ加工をする面に『光明丹』を塗って摺合わせる。

そうすると凹凸(アタリ)の強い所が青黒く当たります。

 

定盤

定盤

すべての基準となる平面の板で、平面度は1μ前後の高精度の物。

 

実は『定盤』も『3枚摺合わせ』という技法で作成する事が出来るんです!

定盤を3枚用意します。(同じ大きさ・形の定盤が良い)

そして3枚の定盤を交互に摺り合わせていく。

そうすると基準となる面が無くても、ほぼ均一な平面に仕上げる事ができます。

 

『定盤』の『3枚摺り合わせ』に関しては、下記記事で詳しくご紹介しています。

 

最後に

今回は『きさげ』とはどういう作業なのか?

どういう工具を使うのか?

についてお話ししました。

 

『きさげ職人』も現在では少数となってきました。

凄く根気のいる作業で、肉体的にもキツク、

腰や身体にもかなりの負担がかかります。

 

しかし、

  • 誰にでも出来る作業ではないという事
  • 工作機械重要箇所を仕上げる腕があるという事
  • 少数になってしまった『きさげ職人』の一人であるという事

その事を思うとやりがいのある仕事だし、

重要な作業をしているという自覚を持って、今後も業務にあたっていきたいと思います。

 

ものづくり業界の若い人達へ

今の時代、機械や作業ロボットによる自動化で、

『ものづくり業会』の雇用も厳しい時代になってきました。

 

その中でやっていこうと思うのならば、

自分は他の人が出来ない事が出来るなど、差別化をはかる必要があります。

 

『きさげ』を身に着けておくという事は、

この業界でやっていく人にとって、とても強いスキルになります!

雇用に関しても優位になる事は間違いありません。

 

工作機械製作にあたり『きさげ』が無くなる事はまずありません。

重要箇所はやはり人の手が必要です。

 

今回この記事を読んでいるあなたが、

『ものづくり業界』でやっていく若い方であるのならば、

積極的に『きさげ技術』を学ぶ事を強くおすすめします!