きさげ加工の基本工具『スクレーパー』を作る!10年使ってもヘタリにくい柄とは
どうも!職人ライダーのヒロです。
今日は きさげ加工の基本工具
“スクレーパー”の作り方をご紹介します!
この方法で作ったスクレーパーを毎日
10年間以上使用してますが、
全くヘタルという事がありません。
(※ヘタル=このページでは経年劣化によってガタついてくるという意味)
きさげ加工では、スクレーパーにかなりの負荷をかけて金属を削っていきます。
そのため長年使っていると、柄と金属の接合部分(下の写真)が
経年劣化によりガタついてくるんですよね ⇩
ここにウエス等をかませて使っている人をよく目にします。
しかし、本格的にきさげ加工を施すとなると
これでは力が逃げてしまうんですよね。
ガタついたスクレーパーでは
ハッキリ言って使い物になりません。
これからスクレーパーを作りたい方。
柄がガタガタなので作り直したい方。
今回ご紹介する方法でスクレーパーの柄を作ってみて下さい。
きっと耐久性の良いものが作れると思います。
ちなみに、
いま使っているスクレーパーを修理して使いたい
という方もいるでしょう。
ガタツキ度合いが軽度の物なら修理できる可能性があります。
柄の修理方法を掲載した記事もあるので
修理してみたい方は
こちらの記事がおすすめです ⇩
この方法で修理した柄はかなり頑丈になるので、
補強したいという方にもおすすめです。
きさげ加工とはどういった作業なのか?
これからきさげを覚えるけどあまり良く知らない。
といった方は、
こちらの記事をどうぞ⇩
目次
きさげ加工の基本工具 ヘタリにくいスクレーパーの柄とは
ではなぜ今回ご紹介する方法でつくると
ヘタリにくい柄ができるのか?
まずはネタ晴らしからお話しします。
それは
スクレーパーの金属部分(柄との接合部分)を
くさび形 にしてしまうという事です ⇩
テーパー形状のくさびにする事で、どんどん柄に食いついていき密着する。
しっかり密着する事によって、どんなに負荷をかけてもガタツキが起こらないのです。
少しでもガタツキがあると、
負荷をかけるたびにガタツキがどんどん大きくなり
最終的には使い物にならなくなります。
元々はこんな形 ⇩
このまま柄の方へ焼きばめしても使えるんですが、
やはり接合部分のヘタリが早いようです。
金属部分は “くさび形” に加工する事をおすすめします。
きさげ工具 スクレーパー の作り方
柄の部分を作る
今回は私が使っているスクレーパーを基準にしてご紹介します。
きさげ加工を施すところや使い勝手によって、
スクレーパーの長さも変わりますが、
作成方法としては同じなので、
参考にして頂ければと思います。
柄の材料として使用する部品
まず柄の素材として選んだのは、オーエッチ工業さんの商品 ⇩
元々は両口ハンマー用の柄で3.6㎏~13.5㎏まで使用できる物。
スクレーパー用の柄の素材として使用するには、
重さも耐久性も申し分のない代物!
「きさげ はたまにしかしないよ~!」
という方はもう少し安い柄でも良いと思いますが、
本業としてやるならこのレベルの物にしましょう。
そして柄に打ち込むためのカラー ⇩
カラーの素材は金属だったら何でも良いです。
今回は銅管ソケット(全長41㎜×内径25.4㎜)を使用したいと思います。
後ほどスクレーパー本体を柄に焼きばめするので
このカラーがなければ柄が割れてしまいます。
そのために必要なカラーです。
カラーはある程度 しっかりした素材の物 が必要だと判明しました。
上記の銅カラーだと素材的にも柔らかいので、スクレーパー本体を何回も打ち込んでいると
強度を維持できず、柄に亀裂が入る といった症状が起きました。
カラーはある程度の粘り強さと強度を兼ね備えた物を使用して下さい。
おすすめ素材として、ガス管(鋼管)などが適切だと思われます ⇩
ただ見た目が不格好なため、気になる方は旋盤などで加工が必要になります。
上写真の物は3/4のガス管を旋盤で外径切削して40㎜程にカット。
柄のカラー用に平たく潰した物です。
可能であれば内径切削もして、出来るだけ柄の肉を残せる様にした方が良いでしょう。
※情報に誤りがあった事をお詫び申し上げます。
カラー交換方法については 下記記事をご参考ください ⇩
以後 説明写真として、銅カラー時の物を掲載していますが、
実際使用するカラーは
ガス管(鋼管)クラスの強度がある物がおすすめです。
柄の長さを把握する
今回 柄の材料として使用する物は、全長900㎜と少々長めの物。
加工するにあたって、欲しい長さを把握しておく必要があります。
柄をカットするのは後々でも良いので、
まずはスクレーパー本体と柄を並べてみて、全体の長さを見極めておきましょう⇩
自分が使いたい長さより、少し長い目に印を付けておくと良いと思います。
ちなみに私が使っているスクレーパーは、全長 約630mmの物 ⇩
身長162㎝の私が使用するには丁度良い長さです。
どうぞご参考までに。
柄を加工してカラーを打ち込む
今回はカラー用の素材として、3/4のガス管(鋼管)を使用します。
これを柄の方へ打ち込んでいく訳ですが、何故そんな事する必要があるのか?
それは カラー無しでスクレーパー本体(金属部分)を柄に打ち込むと、柄が割れてしまうからです。
(過去にカラーなしでやってみると速攻で割れましたw)
では作業を進めましょう。
まずはカラーをバイスや万力で挟んで、だえん形にして平べったくします⇩
そして平べったくしたカラーを柄の方へ打ち込んでいきます。
そのままでは入らないので、カラーの形状に合う様に柄を削っていきましょう。
カラーと柄のクリアランスは、ユルユルにせず叩き込んで無理やりはめ込むと言った感じ。
※ユルユルだと使い物にならない
カラーが入りそうな形状になってきたら、樹脂ハンマーで叩いて様子を伺いながら打ち込んでいく。
無理やり叩いて打ち込んでいく!
そんな感じが良いです。(カラーがしっかり柄を締め付ける感じにする)
そのままカラーが入る様、柄を削りつつ樹脂ハンマーで叩いて打ち込む。
これを繰り返してカラーを打ち込んでいきましょう。
ちなみに柄を削る時、金コノを使うと割合削りやすいのでおすすめです!⇩
- 金ノコを柄に対して やや斜めになる様に当てる。
- 金ノコは押す時切れる様に刃が付いているはずなので、押しながら下へ向かって削っていく。
最後まで打ち込む⇩
柄にくびれを付ける
この工程は一番最後でも良いし、「くびれなんかいらないよ~」って方は別にしなくて良いと思います。
ただ“くびれ”を付ける理由として、
握りやすさであったり、スクレーパーのしなり(バウンド)具合を調節するためだったりします。
なので 使っていて、必要だと感じればやれば良いでしょう。
(以下くびれ加工の工程)
柄の使いたい部分の真ん中より、少し下辺りから削り始める
仕上げ
金ノコで削っていくと良く削れるんですが、かなり表面がガタガタになってしまいます。
表面の仕上げとして、ヤスリやペーパー等で綺麗に仕上げましょう。
最終の仕上げとして、金ノコの刃の反対側で削るのもおすすめ!⇩
最後に、必要な部分よりだいぶ長い目にカットして柄は完成です!
スクレーパー本体の接合部分をくさび形に加工する
私が普段から良く使うスクレーパーは、チップをクランプして使う“クランプ式スクレーパー”
このタイプだと チップを研いで4面使う事が出来るし、
チップ自体交換する事が出来るので超便利!
今回もこのタイプを使用します。
まずは冒頭に記載した通り、柄との接合部分を くさび形 に加工しましょう。
加工するラインをケガク
スクレーパーに対して4面共くさび形に加工します。
加工にはサンダー(ディスクグラインダー)を使うと良いと思いますが、
何も考えず フリーハンドで加工すると、センターがずれて使い物になりません。
きちんとケガキ線を入れてから加工しましょう ⇩
スクレーパー中心に対して、4面のセンターをキッチリ出す様に仕上げる事!
これがずれていると、後で焼いて柄にはめていく時に ずれて柄が使い物にならなくなる。
センター出しの4面はキッチリ出す様にして下さい。
サンダーで加工する
出来るだけ綺麗に加工して下さい⇩
※スクレーパー中心に対して センターはキッチリ出すこと!
加工完了 ⇩
この後くさび形部をガスであぶって 柄を焼きばめする工程に入ります。
センターをきっちり出して、出来るだけ綺麗にくさび形に加工しましょう。
ガスであぶって焼きばめする
この工程では、先ほど くさび形に加工したスクレーパー本体をガスであぶります。
それに柄を焼きばめするという、今回の作業で一番重要な工程!
ここで失敗すると、せっかく作った柄が使えなくなってしまうので
特に注意して作業しましょう!
それにガスを使用するなどの 危険も伴います。
ガスであぶる人/柄を差し込む人に分かれて、
必ず二人作業で行って下さい。
柄にガイド用の穴を開ける
スクレーパー本体の厚みより
少しだけ小さい径の穴を柄のセンターにあける。
穴の長さは柄に差し込む長さ。
その両サイドに、更に小さい径の穴を開ける。(長さは、その位置のくさびの長さ)
例えば
今回使用するスクレーパー本体の厚みは5.0㎜。
なので5.0㎜~4.5㎜くらいの穴を柄のセンターにあける。
その両サイドに更に小さい径の穴をあける(2.5㎜前後くらいが良いのでは?)
※特に中央の穴だけは きっちりセンターど真ん中に開ける事!
ズレていると、後で焼いて柄にはめていく時に ズレて柄が使い物にならなくなる。
センターだけはキッチリ出して下さい。
くさび部をガスであぶって焼きばめする
特に重要なので何度も言いますが、
失敗すると使い物にならなくなるので、特に注意して作業して下さい。
まずは くさび形に加工したスクレーパー本体をバイス台に固定します。(出来るだけまっすぐに!)
そしてガスであぶる ⇩
ほんのり赤くなるくらいで良い、やり過ぎると溶けるので注意!
すかさず柄を差し込んでいきましょう⇩(出来るだけまっすぐに!)
煙が出て柄が差し込まれていきます。
くさびの半分まで来たら、一度抜いて柄の状態を確認しましょう。
- しっかりセンターに来ていたらOK!
- ずれていたら 次に差し込む時それを意識する!
最後にもう一度 ガスであぶって、
くさび形部ぜんたいが入るくらいまで差しこみ
さらに10㎜ほど追い込んで下さい。
※最後まで柄を差し込んだら直ぐに抜くこと!
最後まで差し込んだらすぐに柄を抜くこと!
差したままにしていると、熱でどんどん穴が広がってしまいます。
焼きばめした後の柄は、そのままにしておくと発火する恐れがあるので 水で濡らせておきましょう。
(※錆びるので 完全に乾くまでスクレーパー本体を打ち込まない様に!)
ガスであぶってスクレーパー本体を折り曲げる
折り曲げないで使うスクレーパーもありますが、今回は折り曲げる方を掲載します。
折り曲げる所は、必ずガスであぶってから曲げる様にしましょう⇩
角度とかは上の写真を参考にしてもらえれば良いと思いますが、
人によって力のかけ具合も違うし、角度も変わるものです。
使ってみて自分の使いやすい角度を探る必要がありますね。
この形はだいたい昔から変わっていません。
こうする事によって 折り曲げ部でも力を逃がせる様になります。
逆に言うと折り曲げないと、きさげ面に対してダイレクトに力が加わる事になります。
それにクランプ式スクレーパーの場合、下に出っ張りがあるので折り曲げた方が使い勝手が良いでしょう⇩
折り曲げるか折り曲げないかは、使う人次第
使っていくうちで判断すれば良いと思います。
折り曲げる時は必ずガスであぶって折り曲げる様にしましょう。
バイス等で挟んで無理に折り曲げたり、ベンダーで折り曲げたりすると こうなります⇩
ちょっとくらいは曲がるけど 絶対やめましょう^^;
スクレーパー本体を柄に打ち込む
もうすぐ終盤! この工程でいよいよきさげ用スクレーパーとして形になります!
一番楽しい工程かもしれませんね^^
スクレーパー本体を柄に打ち込んでいきましょう!
くさびの先を少し面取する ⇩
もう焼いて柄に差し込んだ後なので、キンキンに尖った先っぽは必要ないし 危ない。
それに作り方を教えてくれた おっちゃん いわく、どんどん柄の方へ入っていく・・・らしい。
何はともあれ、危ないので面取しておきましょう。
そして柄を打ち込んで ⇩
ほぼほぼ形になりました!^^
試しにちょっと使ってみて、自分の使いやすい長さにカットしましょう。
完成までもう一息です!
身体に当てる部分にクッションを取り付ける
いよいよ最終工程。
柄のお尻(身体に当てる所)にクッションを付けましょう。
クッションに使う素材はハッキリ言って何でも良いです。
感性の赴くままに!
おっちゃんいわく「昔はそのまんま使ってたんやぞ!」(柄のお尻にクッション付けずにw)
とか言ってたけど・・・痛いやん!(笑)
ちなみに私はこんな感じにしています ⇩
クッション替わりに使っているのは 厚みのあるゴム板。(厚さ5mm)
更に鉄板を噛ませて接地面積を大きくする事で、だいぶ楽に突ける様になりました!
そして完成!
久しぶりに作ったけど、なかなか良い感じに仕上がりました^^
実際使ってみても全然問題なし!
これからはコイツを使い倒していきたいと思います。
お疲れ様でした^^
最後に
今回ご紹介したスクレーパー作成方法は、今は定年退職された会社の大先輩
私が凄くお世話になった おっちゃん から教えて頂いたノウハウです。
そのおっちゃんのお言葉。
「お前に作り方教えたるけど、お前はまたみんなに教えたれよ!」
その言葉の通り、今回この方法を記事にする事にしました。
この方法でスクレーパーを作成すると、
10年以上毎日使っても ヘタレる事のない、すごく耐久性の良いスクレーパーが作成できます!
10年以上 毎日体重をかけ続け、めちゃくちゃ負荷がかかっているにも関わらず
びくともしない!
めちゃくちゃ頑丈なスクレーパーです!
今回この記事を作成するにあたって、久しぶりにもう一本作ってみました。
この2本あれば、定年まで全然使えるかもしれませんね!(私の身体の方が壊れるかもしれませんがw)
ちなみにスクレーパーだけでなく、
“ささばきさげ”に使う ささっぱの柄 もこの方法で作成できます。
作り方の原理は同じです。
ただ ささっぱ は柄との接合部分にさほど負荷がかかる訳でもないので、くさび形に加工する必要は無いかもしれませんね。
これから きさげ を学ぶ職人見習いの方。
スクレーパーのガタツキにお悩みの方。
是非この方法でスクレーパーを作ってみて下さい!
今回は以上です。
この記事が何かのお役に立てれば幸いです。
必ず自己責任でお願いします。
万が一事故が起こった場合でも、当方では責任を負えませんのでご注意下さい。
最後の最後に、
この方法を教えて下さった大先輩のおっちゃん。
本当にありがとうございましたm(__)m
Comment
はじめまして
石川県金沢市の岡崎豊徳と申します
柄付きキサゲが欲しいです
私の為に一本作っていただけないでしょうか?
お金で買える物ではないと思ってますが謝礼は致します
初めまして。
当方。工業高校の教員をしております。
数か月の練習であたりを出せるほどのキサゲをかけれるとは思っておりませんが、生徒にキサゲ加工を見せたいと思っております。
そこで移動先の高校で先輩先生が残していったキサゲの刃物を復活させたいとおもっております。
地元企業の見学に伺った際、ダイヤモンドホイールの両頭グラインダで刃先を仕上げているのを拝見しました。
一方で包丁を砥ぐような四角い砥石で刃先を仕上げているのも他所の工場で拝見しました。。
職人ライダーヒロさんの工場では、どのような手段で刃先を仕上げておいでですか。
もし、可能であれば砥石の番手など教えていただけると助かります。
初めまして!
コメントありがとうございます。
弊社の工場では超硬チップしか使用しないので
ダイヤモンド砥石を使用して刃物を研いでいます。
使用している砥石は岡崎精工さんの物で
U.S WHEEL ダイヤモンド
1520 SDC220-N100BD 45-2.0
上記の物を使用しています。
どうかご参考までに。
はじめまして。
きさげを学んでおり、工作機械の組み立てをしている企業の方々と議論をしております。
やはり問題になるのは「あたりの評価方法」です。お客様との意見が食い違う場面もあるようです。
どのようは評価をしていらっしゃるのでしょうか?
坪当たりであれば、なんとなく理解できますが、パーセント当たりだとすると…?
マル秘の部分もお有りでしょうから、ヒントでも構いません。
黒当たりの様子が写真で見ることができれば…(これがマル秘ですよね)。
私は長野県在住です。バイクでお越しの際、お目にかかれると嬉しいです。
要求ばかりですみません。
ご助言いただけると幸いです。